アークオブアルケミスト【感想・レビュー】

レビュー・感想
アークオブアルケミスト

『アークオブアルケミスト』は、水が枯渇して砂の星となった地球を舞台に、衰退する人類を救う「大いなる力」を求めて探索するアクションRPGです。

アークオブアルケミス

モタ氏がデザインしたかわいいい系のキャラクターが、本作品の大きな個性となっています。

『アークオブアルケミスト』のシステム

アークオブアルケミストでは、街を拠点として荒廃したフィールドを探索します。フィールドはいくつかのエリア(階層)に分かれていて、各エリアはそこそこ広め。一度行ったことのある場所はマップが確認できるようになるため、まずはマップが黒いままの未踏地を探索し、各エリアのマップを完成させながら先へ進んでいくことになります。

フィールド上には敵が見える状態で存在し(より正確には近づくとフィールド上に現れる)、より敵に近づいたり攻撃することによって、画面が切り替わることなくそのままアクション性の高いバトルとなります。

フィールド上でのイベントは基本的に自動で発生することはなく、「Event!」と書かれたマーカーと接触することにより発生します。

イベント内容は、ほぼパーティのメンバー同士の会話で進みます。

同時に探索へ出かけることのできるメンバーは、主人公であるクィンを含めて3名。クィン以外のメンバーは戦闘で自律的に行動するため、作戦や隊列などについてメニュー画面から予め設定しておく必要があります。

本作では「大いなる力」へと導く重要なアイテムとして「ルナギア」が登場します。ルナギアにオーブをセットすることによって、フィールド上の仕掛けを作動させて探索範囲を広げたり、戦闘中の攻撃・補助アイテムとして利用して戦闘を優位に進めることができます。

フィールド上で活用する場合、たとえば煙の立ち込める窪地で水のオーブの力を使うことで・・・

窪地に水(氷だっけ?)を張って奥へ移動できるようになります。

そして「大いなる力」を求めて荒廃した大地を探索するのは主人公たちだけではなく、敵対関係となる国から派遣された探索部隊と遭遇してひと悶着あることも。

探索中、体力やアイテムが少なくなってきたら、一度拠点に戻って体制を整えることになります。この際、登場人物同士のコミカルな会話(寸劇)が挟まります。

街はお金を投資して発展させることも可能です。というよりも、発展させてより強い武器・防具等を購入できる状態を整えることが、各キャラクターの一番の強化要素になってきます。

コンパクトにまとめてしまった感

さてこの『アークオブアルケミスト』ですが、現在Amazonのレビューなどではかなり低い点数が付けられてしまっていますね。

これ、シリーズものではないオリジナルのタイトルであること、それなりのスタッフが関わっていることに対する期待感が高かったため、実際にプレイしたときのギャップが大きかったのもあると思います。

とはいえ、いま付けられている低い点ほど内容が酷いかというと、ゲームが破綻しているわけではなく(それが発売を延期しての調整の賜物かどうかは分かりませんが)、ちゃんとまとめられてはいるので遊べないゲームではありません。

まあ、その「まとまっている」の枕詞に「小さく」というのを付けてしまいたくはなりますが……。

なんかこう「もっとできる子に育ちそうだし、育てようとした気配も見受けられるのに、どうしてこの規模でまとめてしまったかなぁ」的なもどかしさ。

戦闘がアクションであることに期待すると辛い

ストーリーは奇をてらってないぶんシンプル。無理矢理どんでん返しに継ぐどんでん返しな展開を詰め込むこともしていないので、これはこれでありだと思います。意味のわからない広げ方でお話が収束せず終わるよりも、コンパクトでもまとまっているほうが好感が持てます。

ただ、シンプルなストーリーであるからこそ、長さ、ボリュームはもう少しあってもよかったのかな。先ほど期待感とのギャップについて触れましたが、クリアまでの所要時間が結構短めなので、『アークオブアルケミスト』をじっくり長時間楽しみたいと思っていた層は、肩すかしを食らってしまったはずです。

そしてストーリー展開がシンプルであることに加えて、問題なのは戦闘も結構単調になってしまっているところ。

作品の前情報から、もっとキャラクターを活かした戦術や、武器を変えたりオーブを変えたりして戦闘を乗り切っていくようなイメージもありましたが、実際にプレイしてみるとほとんどの敵はとにかくタコ殴りにしていれば勝ててしまうものばかり。

ゲーム終盤近くまではレベルが上がるのも速いので、余計に「ただ殴るだけのゲーム」に陥ってしまい、敵がどう動こうが構わずタコ殴り、とにかくタコ殴り。いろいろ工夫する楽しさが見いだせません。

もう少し探索の楽しさが欲しかった

単調といえば、このゲームの舞台は荒廃して砂漠化してしまった時代の話なので、どのエリアに移動しても基本的には砂と岩ばかりです。

世界観の設定上、そうなってしまうのは仕方がないのですが、進んでも進んでもあまり代わり映えのしないフィールドが続くため、新しいエリアを探索するときの新鮮味が薄くなってしまっています。

ただし、最後のほうのエリアと最初のほうのエリアを比較してみると、それなりに雰囲気は変わっているんですよね。ただ、それが次第に次第に少しずつしか変わらないため、全体としては「ほとんど変わらなかった」という印象に落ち着いてしまい、やっぱりもったいない。

もし、フィールドがあまり変わらない雰囲気でも、エリアが変わるごとに敵キャラがガラッと変わってくれれば、まだ印象は違ったかもしれません。

しかし、敵キャラのほうも「色が違う」か「大きさが違う」敵ばかりが多く、これもまた新鮮味を下げる要素として機能してしまっています。

単調で盛り上がりに欠けるといえば、重要アイテムをゲットしたときの演出のなさは驚きのレベル。

ゲーム内で超重要であるはずの「オーブ」さえ、そこら辺に落ちているだけ、かつ拾っても音楽さえ変わらず画面に文字が表示されるだけの渋さです。突如ワイヤーフレーム時代のウィザードリィがフラッシュバック。

これはさすがに、もうちょっと演出が欲しかったかなと思わされました。

演出面でいえば、イベントシーンでもほとんどがパーティの仲間同士の会話のみ(カメラが会話しているパーティのほうを向いたままなので、カメラの後ろで起こっている事象を全く確認できない)なので、そこで何が起きているのか、プレイヤーは見ることができないのもチープな印象を与える一因となっています。

換金する前提のドロップアイテム

ストーリーはシンプル、フィールドも単調、敵もバリエーションに乏しいときても、それらはサブ要素だから邪魔にならないよう意図的にそうしただけであって、幹となる本筋の楽しみは別にあるのです。

といった感じで、たとえば敵が落とすドロップアイテムの収集をもっとメイン要素に据えてしまって、レアな武器や防具を探し求めるハクスラ系に振ってしまうのもありだったかもしれません。というか、1つくらいは掘り下げていく楽しさのある要素が欲しかったところです。

エリアを進むほどドロップアイテムは変わっていきますが、基本的にはどのドロップアイテムも街の施設を充実させるための資金源として「売って換金する」ことが主な用途となりがちで、だったらお金が貯まるのと大差ないよねということになってしまいますから。

ゲーム序盤に説明の表示が入りすぎる

ゲーム序盤で気になってしまったのは、やたらとテキストによるマニュアルが表示されてしまうこと。

1人1人、仲間と出会いながらしだいにパーティのメンバーが増えて行くタイプのゲームならまだしも、既に気心知れたメンバー同士のパーティが結成された状態からゲームがスタートするため、まずはストーリーを進めつつプレイヤーに各キャラクターを把握する時間を設けてほしいところ。

それもなく次から次へとプレイ時間を分断するマニュアル画面(リアルタイムに操作可能なチュートリアルではなく)が挿入されてしまうので、それがゲームへ入り込む阻害要因になってしまっていました。

滅びに向かう世界という設定をもっと活かしてほしい

なんだかんだと気になる点を挙げてしまいましたが、最後に、個人的に一番気になってしまった点を。

『アークオブアルケミスト』では、探索を終えて本拠地に戻ってくると、キャラクター同士のコミカルな寸劇が始まります。

滅亡に向かいつつある人類の、ちょっと暗めの話が本筋なので、コミカルすぎる寸劇はミスマッチと捉えられなくもないですが……暗いストーリーに一服の清涼剤としてこういった要素があること自体は、それはそれでOKです。

これ自体を切り取ってしまえば、ベタな展開ではありますが、なんだか恥ずかしくも微笑ましくて結構好きです。

ですが。寸劇内では世界が滅びに向かっている設定が全く感じられず、むしろ危機なんて無いんじゃないかというやり取りが交わされているのはどうかなぁ。

なんだか違和感を感じてしまって、ゲームからふと現実に引き戻されてしまうんですよね。

フィールド上に、この世界の住人が存在しないことから、住人たちと主人公との会話を通じて世界の置かれた状況・雰囲気が伝わってくる機会はありません。とするなら、フィールド探索から戻って来て発生する寸劇の部分だけでも、直接的じゃなくていいので会話の端々から生活の大変さ、砂漠化による暮らしの変貌などを感じ取れるようにしてほしかったところ。

ネコを普通にかわいがる、ただ野菜スープの味にこだわるのではなく、砂漠化した時代だからこそのかわりがりかた(ネコを飼うことの難しさ)や、食材が乏しい中での味へのこだわりなどを垣間見ることができれば、もっと肌に近い感覚で滅びに向かいつつある世界が伝わってきたのでは。

そして、プレイヤーによりそれを強く感じ取らせることが出来れば、砂や岩ばかりのフィールドに対する「砂漠ばかり続く手抜きマップ」といったネガティブな印象も、まだ少しは薄まったのではないでしょうか。

街の設備も投資すればどんどん反映するし、どちらかといえば滅びよりも、これからゴールドラッシュが来そうな活気ある華やいだ雰囲気を画面から感じてしまうので、なんだか印象がちぐはぐです。

まとめ

もっと良くなったはずなのになぁ。という思いから、つい気になる点ばかり挙げてしまいましたが、前述のとおり『アークオブアルケミスト』はゲーム自体が破綻しているわけではなく、個人的には結構楽しく遊んでしまったタイトルです。

プレイヤーキャラであるクィンの、感情を抑えた静かで淡々としたしゃべり方もかなりツボでした。

操作を覚えるのが大変だったり、クリアまでやたら時間が必要だったり、ちょっとしたアクションのミスでゲームオーバーになるゲームも増えているので、そんなゲームに挟んでプレイするとちょうどよいボリューム感・難易度に感じます。

ストーリーがグロくないし、キャラもかわいいし、立ち姿が脇を締めてなくて棒立ちなので新しいというより懐かしい感じ、知識や操作を覚える必要なく、ちょっとした空き時間にも遊べる手軽さ。

もしかしてこの辺、携帯用ゲーム機向けでスタートした企画だったりするのでしょうか。

これらは短所として挙げられることが多いようですが、表裏、長所にもなります。

と、最後は肯定的な感想でまとめましたが、現行機種であるPS4にナンバリングではないオリジナルのタイトルとして投入された作品であるからこそ、やはり何らかの新鮮味や先進性、あるいはウリとなるはずだったアクション性・戦術性の高いバトルを、もう少し昇華させてくれていれば!

上ではPS4版について触れましたが、後日リリースのNintendo Switch版はすべてのパーティキャラが操作できるなど、改良がなされているようです。