『The Church in the Darkness』は、Fellow Travellerがリリースしたカルト教団潜入ステルスアクションです。取り扱われている題材が題材なだけに、一風変わった雰囲気を持ったゲームに仕上がっています。内容的に結構ヤバい展開もあるので、CERO Z指定です(ただし直接にグロい描写はほとんどありません)。
カルト集団の真実を探れ
町で出会う人々や、探索で発見できる文書や手紙から謎多きフリーダムタウンの真の姿が見えてくる。行方知れずとなったアレックスを探しながら、理想郷と呼ばれる土地に秘められた謎に迫ろう。
題材が渋く見た目もすごく地味なので、遊び始めた当初は「これ、どうなの?」的な雰囲気も感じたのですが……杞憂でした。全体的なボリュームやシステムが非常にほどよい案配で作り込まれていて、プレイヤーのスキルアップに従いプレイスタイルの幅も広がっていく。ついつい遊んでしまう魅力のある1本です。
複数回プレイを前提とする短時間で遊べるシステム
『The Church in the Darkness』は、カルト教団で生活している甥の安否確認のため、南米の村へ潜入するところからスタートします。
村のマップこそ固定で変化しないものの、侵入地点や協力者、目標となる甥の場所はプレイのたびランダムに変更される仕組みです。
また、プレイヤーが村でどのような行動をとるかによって、話の流れも分岐していきます。
そのため、ゲームのシステム的にはカルト教団に関するストーリーがじっくりと展開するのではなく、慣れれば1プレイ数十分程度で遊べる、周回プレイを前提とした作りです。
他のゲームの合間に、ちょっとプレイするのにも向いています。が、このゲームもまた一度はじめてしまうと「もう1回」「次こそ行けそうな気がする」と、ついつい遊んでしまう羽目に陥りがち。私は一週前にリリースされた『ライザのアトリエ』の進行が、このゲームによって相当遅延してしまいました。
ゲームの流れ
『The Church in the Darkness』では、基本的には
- 村へ潜入
- アイテムを揃えながら協力者の場所を確定
- 協力者から情報を収集
- 甥の場所へ移動
- 甥とともに脱出
といった流れでゲームが進みます。もっとも、このゲームはプレイヤーの行動によって展開が分岐していくため、上のような流れが一番素直とはいえ、どんな展開になるかはプレイヤーしだい。
特に、村人や警備員を傷つけてしまったかどうか、それを誰かに見つかってしまったかどうかで、話の流れが大きく変わっていくことになります。
犠牲者を1人も出さずに、甥とともに脱出を試みたいところですが……警備の目が厳しいので、最初のうちはなかなか難しい!
シナリオの分岐でプレイヤーの行動がバレる面白さ
『The Church in the Darkness』では、シナリオが分岐するときに章のタイトルが付けられていきます。
クリア後に章の構成がまとめて表示されるのですが、これを見るとシナリオがどんな風に展開したのかだけでなく、そのプレイヤーがどんな行動を取ったのかまで、だいたい分かってしまいます。
「あ、コイツは見境無く銃をぶっ放すタイプだな」とか「潜入が下手で、何度も見つかってるな」とか、プレイヤーの性格までいろいろ垣間見えてしまうところが、恥ずかしくも面白いところ。
すぐ見つかってしまったとき付けられる「白日の下」というタイトルも恥ずかしいんだけど、特に「生と死」というタイトル。これは誰かの命を奪って、それが村全体に知れ渡ってしまったときに付けられるので、このタイトルはできるだけ避けたいのです。これが第2章とかに出てくる人は、おそらくカルト教団より危ない!
人々の視野に入らないよう行動するステルスアクション
『The Church in the Darkness』に登場するのは、主要人物である甥や協力者、カルト教団の教祖たち、および村の住人とカルト教団の警備係です。
PS4では×ボタンを押すことで、短時間ですが人々の視野を確認することができます。視野が黄色ならただの村人、オレンジや赤は武器を持った教団側の警備員、緑なら主要人物といった具合に、視野の扇形で色分け区別されています。
ちなみに難易度をイージーにすると、敵の視野表示時間がだいぶ長くなるので楽です。
警備係であるオレンジや赤の視野にモロに入ってしまうと、容赦なく発砲されてしまいます。もし警備係が持っている銃器がショットガンなら、近距離で撃たれてしまってはどれだけ回復薬を持参していても一発で昇天、ゲームオーバーです。そのため、いかに見つからずに効率のよいルートで駆け抜けるかが、このゲームを進める上での肝になってきます。
最初はなかなか思うように動けませんが、慣れてくると協力者のいる場所へ、甥の軟禁されている建物へ、まるでプロの潜入探査員のように村人にバレることなく突き進むこともできるようになります。
この辺の「自分、上手くなってきたぞ」感が段階的に味わえるのは、ゲームバランスがうまく組み立てられているからこそですね。
誰の命をも奪わずに目的を達成できるか
『The Church in the Darkness』に登場する一般の村人や警備員は、あくまで見つからないように避ける対象であり、会話などのコミュニケーションは取れません。
プレイヤーが選択できるアクションは、主に「隠れる」か「気絶させる」か「殺す」の3択。気絶なら命を奪ったことにはなりませんが、ごく一時的に動けなくするだけなので警備員の数は減りません。
村に登場する村人全員、警備員全員をどうするかはプレイヤーしだい。一人たりとも気絶さえさせずに進めることもできますし、出会った人物を片っ端から暗殺していく、いったいプレイヤーは何をしに南米まで来たんだよ!的な進め方も可能です。
さらに『The Church in the Darkness』の場合、主要人物である協力者や甥、教祖まで、すべての登場人物に対してプレイヤーがどう振る舞うか自由であるところも特徴的です。
安否を確認しにきたはずの甥にまで、「殺す」という選択肢が表示されるところに、このゲームの縛りの無さが端的に現れています。恐ろしい。
探索を有利に進めるためのアイテムは現地調達
『The Church in the Darkness』を何度かプレイし直していると、次第にゲーム開始当初に村へ持ち込めるアイテムの数が増えていきます。とはいえ、その数は2、3種類程度なので、基本的にアイテムは現地調達です。
アイテムは村の家を家捜しすることでゲットすることもできますし、警備員や村人から強奪することも(気絶させてアイテムだけ奪うことも)できます。
村の設備として結構やっかいなのが、異常事態を知らせるための警報器。これを鳴らされると、侵入や殺人が村中にサイレンで警告されてしまいます。そこで、警報器を金属で殴って壊しておくか、もし警報器を鳴らされた場合にはワイヤーで停止させて切り抜けることになります。
ただし、警報器は村の至る所にあるので、すべて壊して回るのは面倒。また警報器を壊す(警報を停止させる)アイテムの数にも限りがあるため、どの警報器を壊しておくべきかという判断も問われます。
まあプレイのたびに対策するのも面倒なので、結局は警報を鳴らされない行動を取るのが一番なのですが。
アイテムを持てる数も少ないので、銃器優先か、回復薬優先か、それとも上記のような警報器などに細工する道具優先か、アイテム構成にもプレイヤーの個性が出ますね。
アイテムについては、クリアすると使えるアイテムが追加されていきます。何度も遊ぶことが前提の作りなので、アイテムの追加でまた違ったプレイスタイルを試せるのはいいですね。
シナリオはカルト教団ならではの独特な香り
『The Church in the Darkness』は、取り扱われている題材がカルト教団だけに、シナリオや雰囲気は他のゲームにない独特のものがあります。
村の中では四六時中といってよいほど教祖たちによる放送が延々と流されていますし、村の施設も畑など一般的なものもあれば、どう見ても危険な行為を行っているとしか思えないような檻のようなものまで。
しかもその檻に、NPCが閉じ込められてじっとしている光景とかあるし……。
教祖の放送も、プレイヤーの行動によって内容が変わっていくのが面白いところです。プレイヤーが暗殺者的な振る舞いをすれば、教祖の放送にも切迫した雰囲気や恐怖の色がにじみ出てきます。
ただ、教祖の放送は字幕で日本語が用意されてはいますが、実際の放送は英語。警備係から逃げ回っている間、放送がかかっていてもなかなか内容まで理解する余裕がありません。
ここが『The Church in the Darkness』を日本語版でプレイする際の弱点ですね。教祖の性格は何種類も用意されていて、潜入するたびにどのタイプの教祖なのか変わるのこともゲームの特徴なのですが、日本語版でプレイすると吹き替えがないので放送までなかなか意識を向けられず。
補足しておくと、字幕やゲーム内に出てくる手紙や資料については、丁寧に日本語化されているので、その辺で違和感を感じることはありません(Kakehashi Gamesさんかな?グッジョブです)。
それとこのゲーム、実際にあった宗教的な事件をベースにゲーム化していることから、展開によっては結構悲惨な方向に(史実とほぼ同じ結末に)進むこともありますし、なんとも危険なアイテムが出てくることも。
この辺は、CERO Z指定ならではですね。飲んじゃダメ。ゼッタイ。
プレイヤーのスキルや話の展開によってゲームの幅が広がる
途中でも触れましたが、このゲームは次第にプレイヤーのスキルが上がっていくことで、ゲーム内での行動にも幅が出てきます。また、周回することでアイテムが増えたり、展開によって違ったプレイスタイルを要求されたりもするので、ゲーム自体は単純なのですが意外と奥の深さを感じさせてくれます。
最初は甥のアレックスを見つけるため、自分の安否だけを気遣っていればよいのですが、もし一緒に脱出を試みる展開を選択するなら、甥とともに逃げるための新たなプレイスタイルやスキルを求められることに。
そして甥を助けられるようになると、さらに次のステップアップが求められたり。
できることが広がり、プレイスタイルに幅が出ることによって、今までは現れていなかった次の課題が見えてくる。この辺の段階的なゲームの広がりかたが、あまり大風呂敷を広げていないぶんだけ、上手く作られているなと思わされました。
見た目も地味、扱われている題材も渋め。周囲でこのゲームの話題を目にすることが少ないのですが、もしちょっとでも興味を持たれたのなら、一度遊んでみてもらいたいタイトルです。
追記 Switch版はゲームの起動にかなり時間がかかるようなので、PS4持ってるならそちらのほうが快適かもしれません(私はPS4版でプレイ)。