『The Friends of RINGO ISHIKAWA 』は、くにおくんシリーズのような不良高校生アクションを土台にしつつも、実はとある街を舞台に異なるジャンルとして昇華させた、自由度の高い高校生活シミュレーションです。
開発はロシアの人のようですが、日本の町並みや生活、学生生活ならではの鬱屈した雰囲気や揺れ動く気持ちが違和感なく描かれていて、言われなければ気づかないほど。
キャラクターのイラストを描いてくれる人が見つからず、開発者の60才近い父親がWindowsのペイントからまずは覚えて協力してくれた、という裏話もPC版発売時に話題になりましたね。
開発者インタビューでも触れられているとおり、街の中で自由な生活を送れるというのは『シェンムー』に近いものを感じます。
高校生活を充実させるか否かはプレイヤーしだい
『The firends of RINGO ISHIKAWA』は、学校や自宅を含めた徒歩圏の街が箱庭のように用意されていて、その中でプレイヤーの思うままに高校生活を送ることができる、非常に自由度の高いゲームシステムをとっています。
高校生なので学校生活が中心となりますが(とはいえ、学校に全然行かない遊び方も許容してくれます)、コンビニで弁当やサンドイッチといった食料品を買ったり、
喫茶店でサラダやチャーハンを注文して自宅から持ってきた本をのんびりと読んだり、
テレビやゲーム機を買い込んで、自分の部屋に設置してみたり。
このブラウン管と8bit機のアイコンがなんとも。石河倫吾は高校性なので自由に使えるお金も限られていますが、なんとかして揃えたいという気にさせられます。
テレビを設置すれば、もちろんゴロゴロと寝転がりながら怠惰に番組を観ることもできますし、ゲーム機を買えばゲーム内ゲームだって(一応)遊べます。イベントのフラグがそろえば、仲間と一緒に楽しむことだって可能です。
もちろん、誘惑に負けず机に向かって黙々と勉強を進めるのもよし。
授業時間中に学校へ行けば時間割に応じた授業を受けられますし、
放課後は図書室で自習することもできます。
街はそれほど広くありませんが、学校のほかにも商店街あり、駅あり、空き地あり、住宅街あり、海辺ありと、徒歩圏で活動できるエリアに様々な施設・場所が用意されています。
ケンカに明け暮れるか、勉学に励むか
主人公の石河倫吾は不良高校生なので、もちろん街なかでケンカや乱闘に加わることも可能。
このゲームには全体マップやファストトラベルが全く用意されていませんが、それがこのゲーム内での街の存在感向上に一役買っているように思え、マイナス要素には感じませんでした。高校生って、そもそも行動範囲がそんなに広くないし。
主人公にはHPやスキルが設定されていて、ケンカをすればするほど(あるいはケンカのためにトレーニングを積むほど)強く、また勉強をすればするほど学業成績が良くなります。石河倫吾をどう育てていくかは、プレイヤーしだい。
主人公を強くする以外に、もし乱闘で勝ちたいなら仲間を連れて行ったり、有利な場所に1人ずつ誘い込んだり、あるいは別勢力同士の乱闘中に姑息に後ろから加わって漁夫の利を得るなど、プレイヤー側の工夫をこらす余地もあります。
毎週土曜日はテストの日なので、勉強に励んでいればその成果を試す機会です。
成績が良ければ、毎週結構な奨学金をもらえます。激安時給のバイトでお金を稼ぐことも可能ですが、良い成績を残して奨学金を受け取るほうが格段に効率がよかったりします。
夜の街で毎晩ケンカしてカツアゲしても、数十円しか持ってない不良ばかりですし……。
プレイヤーが石河倫吾にどのような生活をさせたかによって、ゲーム中の会話もいろいろと変化していくので、1回目はケンカに明け暮れる生活、2回目は勉強一筋の生活など、生活習慣を変えて遊ぶ楽しさもあります。
できればその両方を一度に堪能したいところですが、1日の時間は限られているので、なかなかそうもいきません。
ゲーム中、操作方法や物や場所の用途についてほどんど説明が入らないので、ゲームに用意された要素の半分も気づかないままプレイを進める人もいるかもしれません。
しかし、これもまたThe Friends of Ringo Ishikawaのマイナスではない特徴の一つになっているかなと思います。
現実でも、毎日学校と自宅を往復して勉強だけしている生活では、街のボクシングジムやバー、トレーニングジム、ポーカー、深夜の公園などとは縁遠く、どんな世界が広がっているのか想像することすらないはずですから。
イベントや仲間との会話が秀逸
『The friends of RINGO ISHIKAWA』では、特定の日数が経過したり、どの場所にいつ訪れたかなどによって、日常生活の合間に特定の仲間とのイベントが発生します。
私はこのゲームを2周してみましたが、どんなイベントが発生するかは通常ではわかりにくいフラグによっていたり、あるいは単にランダムなものもあったりもするようなので、プレイヤーそれぞれがちょっと違った高校生活を送れる程度には幅のあるゲームとなっています。
あなたは同級生の異性と、自分の部屋で数学を勉強しましたか?
現実の話じゃないですよ、ゲーム内での話。
学校帰りには毎日、ビデオ屋でアルバイトをしたというプレイヤーもいるかもしれませんし、アルバイトの存在自体に気づかないままのプレイヤーもいるでしょう。
そして『The Friends of RINGO ISHIKAWA』の最大の魅力は、タイトルにも入っているFriendsたちとの会話ですよね。
高校生ならではの本当にどうでもよい、他愛ない会話。
その場の流れでふっと現れた泡のような、つかみ所のないやりとり。
お互いが自分のことを話し、会話が成立しているのかさえ危ういようなコミュニケーション。
どことなくもの悲しいBGMが多いThe Friends of Ringo Ishikawaでは、これらの高校生視点での会話が積み重なっていくことによって、直接にストーリーが語りかけてこなくとも、プレイヤーに様々な思いを抱かせます。
プレイ中の自由度が非常に高いことによって、エンディングに突入する最後の流れには賛否あるかもしれません。
『The friends of Ringo Ishikawa』の2周目クリア。大人ではない、しかし子供でもない。同じような毎日の中、特別を手に入れたくて無理に背伸びをする。ボクは何かを掴めるだろうか。風はいまだ吹く気配もない。#NintendoSwitch pic.twitter.com/lwNoCK8iEr
— 竜胆@GNW2 (@lindow) August 4, 2019
しかし、このゲームのタイトルについてあらためて考えが及ぶ、良いエンディングではないかなとも思えます。
The Friends of Ringo Ishikawa、石河倫吾の友人たち。最後に、ところで石河倫吾っていい名前ですよね。ロシアの人が作ったらしいのにネーミングセンス抜群だなぁ。