『Devil May Cry 5 – Before the Nightmare -』は角川スニーカー文庫から刊行された『デビルメイクライ 5 』ゲーム本編の前日譚となる小説です。
『デビル メイ クライ 5』本編前の復習に
ゲーム本編の前作『デビルメイクライ4』が発売されたのが2008年ということで、そこから既に11年が経過。時の流れとともに、過去の事件や人物の関係など、だいぶ記憶が薄れてしまったのではないでしょうか。
この小説は『デビルメイクライ5』の前日譚としての公式ノベライズなので、主にゲーム本編から1ヶ月ほど前の出来事が描かれています。
が、だからといって『デビルメイクライ5』の導入としての役割のみ担っているわけではありません。
小説内の物語に関連付けるかたちで、第1作『デビルメイクライ』から前作『デビルメイクライ4』までのエピソードが紹介されています。
ダンテとダンテの兄バージルとの確執、魔界の帝王ムンドゥスとの対決、デュマーリ島でルシアと共闘した覇王アルゴサクスとの戦い、そしてネロの活躍したフォルトナでの魔剣教団の絡む事件など、すべて絡めて紹介してくれるので、シリーズ1から4(および周辺を取り巻くもろもろ)までの復習も兼ねつつ楽しめます。
というよりも、シリーズのファンなら復習的な効用に留まらず「あのエピソードとこっちのエピソード、よく繋げて全体をまとめ上げたものだなぁ」という、それほど長くない小説であるにもかかわらず、『デビルメイクライ』シリーズ全体の総集編的・再構成的な楽しみ方もできる小説です。
DMCシリーズ未経験者の導入としても最適
そしてこのノベライズ作品の巧いところは、『デビルメイクライ』シリーズを全く未経験の人でも読むのに支障がない構成で書かれていることです。
「シリーズ経験者なら既知の事実なので割愛」と新規参入者を切り捨てることなく、だからといってシリーズ経験者には「知ってることばかり書かれていて読むのが面倒」とも思わせない(むしろ知ってるからこそいろいろ驚いたり戸惑ったり)、絶妙なバランスでこれまでのエピソードや知っておきたい知識がちりばめられています。
そのため「いまさらシリーズものの『5』を遊んでも、置いてきぼり感が出そうで嫌だな」とDMCシリーズが未経験でゲーム本編を躊躇している人も、このノベライズから入ることで何の問題もなくゲームに没入できるところが利点です。
ムンドゥス?バージル?誰それ。ルシア?トリッシ?全く知らん。そんな人でも、この小説を読むにあたっては全然問題ありません。
今回はノベライズの作者さんが、ゲーム本編のシナリオライターである森橋ビンゴ氏であることも、ゲーム内で展開されるストーリーとの整合性の面で安心感があります。無理なく過去のエピソードを紹介していく手際も、本編のシナリオライターさんだからこそ、よりスムーズに行えているのかもしれません。
ゲームの高揚感と臨場感が高まる
最後に、本編へと繋がるエピソードを小説で読んでいる利点としては「ゲームが始まるときの高揚感・臨場感が違う!」という、前日譚ならではの効用を十分に味わえることがあります。
「ここから先は、ゲームとして新たに映像で続きを楽しめる!」
オープニングのムービーを眺めている時点で既に、かなりゲームに入りこんでいる自分がいることに気づきました。導入編としても、非常に良い出来のノベライズです。
最近はゲーム1本を作る労力が昔と比べて上がっていて、シリーズものはどうしても続編リリースまでの間隔が開いてしまいがち。そのぶん前作までの記憶も薄れてしまうので、こんな上手な前日譚のノベライズなら、もっと他のシリーズでも増えて欲しいなと思わされました。
ということでシリーズ経験者も未経験者も、DMCをプレイするすべての人にオススメです!