パスパルトゥー:アーティストの描いた夢【感想・レビュー】

パスパルトゥー レビュー・感想

『パスパルトゥー:アーティストの描いた夢』は、大成するまでの苦難と夢を体験する画家人生ゲーム……といった大仰なものではなく、言ってしまえばキャンバスに描いた絵を売ることで日々の糧を得る個人事業シミュレーションです。

もとのゲーム紹介文にもワインやバゲットが欲しいからと書いてあるので、こんな紹介でも概ね間違いないのです。

パスパルトゥーは、美しく混乱したアートシーンを模索しようとしているフランスの芸術家の夢をあなたが引き継ぐことから始まります。あなたはワインやバゲットを食べ続けるために、自分のアートを描き売り続けなければいけません。

https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000018281

キャンバスに絵を描け!そして売れ!

ゲームは一応、章立ての進行になっています。

パスパルトゥー

まずは薄汚い路地裏のようなスペースにあるガレージで、主人公パスパルトゥーが絵を描きはじめるところからスタートします。

ゲーム内チュートリアルのようなものは特にないので、操作方法などは手探りで覚えていかなくてはなりません。ただし出来ることは非常に限られているため、ちょっと遊んでいれば操作に戸惑うことはなくなります。

イーゼルをクリック(タップ)すると、画面半分にキャンバスが表示されます。このキャンバスに、画面右下のパレットから色を選んで好きなように絵を描いていきます。

パスパルトゥーの絵

慣れないうちは、どうやって筆の太さを変えるのかもよく分からないので、ペンキで書き殴ったような大ざっぱな絵しか描けません。

Nintendo Switchで『パスパルトゥー』を遊ぶ場合、TVモードで大きな画面にするとキャンバスのサイズも大きくなるので見やすいのですが、タッチパネルで描けないためコントローラーで四苦八苦して絵を仕上げることになります。

逆に携帯モードにすればSwitchのタッチパネルで直接に絵を描けるので直感的に遊ぶことができますが、画面サイズが小さくなってしまうので細かな部分に描き込むのは難儀します。

絵が完成したら、その絵に題名をつけます。

題名のついた絵は通りに面した展示台に並ばれ、道行く人が興味を示せば何か感想をつぶやいてくれたり、気に入ってくれれば購入してくれます。

基本的なゲームの流れはこれだけなので、とにかく絵を描く!そして売る!この繰り返しで進みます。働かざる者食うべからず。

最初は操作に慣れないため雑な絵になってしまいがちですが、意図したものとかけ離れているぶんだけ、なんだか枠に縛られず魅力的な抽象画のようにも見えますよね(自画自賛)。

小さな子供の描いた絵が魅力的なのも、こんな理由からかもしれませんね。

辛口の感想や批評が面白い

展示台に載せてしまえば、あとは描いた絵に対する辛口な感想や評価を頂戴することができます。

ランダムで感想や評価が表示されるわけではなく、一応、描いた絵を判定しているようなので、描き方によって感想が変わってくるのが面白いところ。

「普通すぎだぜ、絵描くの嫌なのか?」とか「色のエリアが少ないように見えるね」など、ゲーム開始直後に描いた絵には辛辣な感想が寄せられることでしょう。

そんな駆け出しの画家にも、ありがたいファンはついてくれるもので。絵が気に入って購入してくれる人もいれば、将来性に期待して拙い絵を買ってくれるファンも出てきます。

少し描き続けることによって、画力も次第に向上していくところも、このゲームの面白さの1つですね。

画材や描き方がかなり制限されているからこそ、余計なことに気を遣ったり、やたら緻密に描こうと思わずに済むぶん、楽しくゲームを進めることができます。

できることは限られているとはいっても、ゲーム途中で新画材ツールが解除されたり、新しい要素が多少は追加されていくところもモチベーション維持に役立ちます。

好きな絵を描くのか、売れる絵を描くのか

『パスパルトゥー:アーティストの描いた夢』では絵を描いている間もリアルタイムで時間が流れていきます。絵を描くにも食費などの経費はかかるわけで、この辺、凝った作品を作りたいものの時間をかけすぎると破産してしまうという、なんとも個人事業のジレンマ的な気分が味わえます。

絵が評価されれば、より良いアトリエ・ギャラリーを構えることができますが、そのぶん家賃も上がり、良いモノを食べるようになるので食費も上昇。より高く売れる絵を描かなければ!と、なんだか急かされて自分の作風を見失いそうになるところがリアルです。

とはいっても、同じような絵ばかり描いているとなかなか売れませんし、そうでなくても何故か一向に売れない絵も出てきたりして、いろいろと作風を広げる道を模索することに。

次から次へと売れるようになると、次第に「次の作品は何を題材に描けばいいんだ!?」という葛藤も待っています。

たぶん

まとめ

『パスパルトゥー:アーティストの描いた夢』は壮大な画家シミュレーションゲームなどではなく、どちらかといえば気軽に楽しめるお絵かきソフトにストーリーが付いたようなバランスの作品ですが、大まかな機能しかないぶんだけ絵を描くこと自体に集中できます。

描いた後、いつまで展示していても批判の嵐だった「とまと」というこの絵が……。

批評家によって評価され、新聞で紹介してもらえるなど、ランダムな要素も含めてプレイヤーごと勝手に物語が出来上がっていく面白さもあります。

トマトの絵に対して「興味深いダークグリーンと対照的なレッド」など色彩もちゃんと判断してくれているようですし、なによりトマトを題材としているところに「私の祖母がよく作ってくれたラタトゥーユを思い出させてくれました」など、関連するワードがピッタリはまると「おおっ!」と声が出てしまいます。

ゲームの本筋はそれほど長くないので、サクサクッと絵を描いていくと数時間でエンディングまで至るボリューム感です。このお手軽さは本作品の魅力ではありますが、なにしろゲームとしてあまり取り上げられることのない題材です。

これをより膨らませて、描く絵や支持してくれるファンや批評家によって、画家としての人生が大きく分岐していくような作品も作れるのではないかと思わされました。

あと最後になってしまいましたが、遊んでいて音楽がなかなかに心地良くも(絵を描く作業と相まって)ヒーリング効果がありました。個人的には、画家として有名になってから以降よりも、路地裏のガレージで描いていたときのどこか寂しくも美しい旋律が好きです。

iOSやAndroid向けにもリリースされているようなので、大型のタブレットのほうが、より絵は描きやすいかもしれません。が、Switchの狭い画面でなんとかそれっぽい絵に工夫する過程も含めて、思った以上に楽しめる作品でした。

クリア後にゲーム内で描いた絵をすべてまとめて、画集に保存・閲覧できるモードがあればなお良かったかな。稚拙でも、手間暇かけて描いた絵って愛着が湧きますもんね。

パスパルトゥー:アーティストの描いた夢
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